浅田飴
店頭で迷っていた。
こっちの咳止めがいいかな、いや、こっちのほうがいいかな。
すると、右斜め後ろから
「それ、いいですよ」とボソッと話す男性の声。
「それ、僕がひっぱってきた商品なんです」
「僕が小さいころはこれが玄関においてあって
ちょっと喉が痛いと、母が、すぐ舐めていきなって」
「薬ですから、ほかのものとの併用は避けてください」
「小さいお子さんでも使えますからいいですよ」
などなど。
きっと、この店の薬剤師さんなんだろうな。
おぼろげに見たことがあるような気もするし。
でも、確認しないのもなんだな、と思い、
「そうですか。じゃあこれにしようかしら。
ちなみに、薬剤師さんか何かなんですか?」と振ってみる。
すると・・・
「あ!ええ、薬剤師です。この店の店長です」と。
店長、きっと薬が大好きなんですね。
自分が気に入って置いている薬を見て
買おうかどうしようか迷っている客に、
声をかけずにはいられなかったんでしょうね。
・・・で、買いました。
浅田飴「水飴」。
それこそ私は小さい頃から、一度使ってみたかったんです。
店長の愛情をひしと受けた浅田飴。
いま、我が家のキッチンに置いてありますが、
なんだかそこにいつも愛情が灯っているようで、
自然と愛しく感じてくるから不思議です。